elderlyママのぼやき

銀座の高齢なママです。夜な夜な話を書いています。

『きゅうくつなポジション』

 お得意様のMさんがご昇進されたのは昨年の10月です。

 それまでの資材部長から常勤監査役への異動で、大抜擢だったそうです。

 監査とは、会社が健全に経営されているか、不正がないかをチェックする部門なので、当然ご自身も清廉であらねばなりません。

 それまで毎晩のごとく、あちらこちらの取引先から接待を受けて銀座の夜を享受していたMさんは自重を余儀なくされてしまいました。
 
 会社の同僚ともうかつに飲めなくなり、どころか避けられるようにさえなったそうです。

 しょうがなく、早めに帰宅すると今度は奥さまにイヤなお顔をされるそうで、
「本当は自腹で飲みたくないんだが…」
 と言いつつ、お忍びで見えるようになりました。

 それも、 
「うちの会社の人間はf:id:ElderlyMom:20200118130512j:plain来てないか?」
 事前の電話確認は必須になり、扉が開くたびキョロキョロと落ち着きません。

 お帰りの際も、
「ここでいいから」
 と表まで見送らせず、空き巣のごとくこそこそと出て行きます。
 
 監査に抜擢された当初は、
「個室を与えられた」
 だの、
「秘書も付いた」
「年俸は二倍になった」
 だのと有頂天になっていたのですが、これらの不自由さは想定外だったようです。

 それなりにお気の毒とは思っていたのですが、最近になって飲み方がガラリと変わり、同情出来なくなってしまいました。

 何と、若い女性を相手にエロ話や下ネタばかりを連発するようになったのです。

 ニヤつきながら、
「君と混浴に入ったら君は最初にどこを洗うのかな? 胸かな? それとも…」

「○○の時、君はどんな顔をするんだろうな?」

 当たり前ですが女性たちは引いています。
 
 陰で、『妄想親父』とあだ名をつけて席に着くのもイヤがっています。

 あれほど村上春樹を熱く語り、それゆえノーベル賞の正当性まで説いていた彼はどこへ行ってしまったのでしょう。

 思うに、お姉ちゃんを誘ったりくどいたりが出来なくなった彼の脳回路がさ迷ったあげくに、妄想という名の桃源郷を探し当てたというところでしょうか。

 近頃ではMさんが見えると女性たちが更衣室に隠れてしまうので、引っ張り出すのが大変です。

 
 

 

チーフたちのリストラ

 銀座の街から男性スタッフが減っています。

 ことカウンターチーフが顕著です。

 景気が悪化する一方で、戦力であるホステスを削るわけにいかず、女性で代用のきくチーフたちが犠牲にされているのだと思います。

 先週、知り合いのマスターから電話があり、

「ママの店でチーフ使わない? 真面目でいいやつがいるんだけど」
 打診されました。

 話を聞くとそのチーフ、新年早々に、
「今年から女性だけでやりたいから」
 と経営者から追い出されたそうなのです。

「50ちょっとで歳は食ってるけど、客もついてるし、大箱でメインでやってた時期もあるんだよ」

 グイグイ押して来られましたが、
「男性を雇う余裕がないので」
 正直に言ってお断りしました。

 チーフがいたら楽なのはそれはわかっています。

 今、自分でやっている開店準備から、洗い物、掃除、伝票計算まで全部やってもらえるのですから。

 しかしながらギリカツでやっている昨今無理は禁物です。

 そう言えば知り合いのママも、今いるチーフを辞めさせると言っていました。

 彼女の店は当店と違って賑わっているので不思議に思って、

「どうして?」
 と聞くと、経費上f:id:ElderlyMom:20200115202015j:plainの問題ではなく、チーフの審美眼に問題があるからと怒り口調でした。

 彼女いわく、
「私は銀座っぽい、雰囲気のある女性が好きなのに、あのチーフ、巨乳ばかり連れて来るのよ」
 
 ここ半年で若い巨乳ちゃんを2人入店させたそうで、

「スリムならともかく、揃いも揃ってデブなのよ。顔だって可愛くないし、店の雰囲気めちゃくちゃよ」

「でもそれで店がはやってんならいいじゃないの? 巨乳好きのお客さんは多いんだし」
「チーフと同じこと言わないでよ!」

 怒られてしまいましたが、好きなタイプの女性を入店させたがるのは男性スタッフのあるあるなので、もしかしたらそのチーフもおっぱい星人なのかもしれません。

 結局は、そのチーフはママと折り合えないまま、巨乳ちゃん2人を引き連れて別の店に移るそうです。

「せいせいするわ。銀座だってこと忘れないでもらいたいわね」

 最後まで強気なママでしたが、潤っていたのにもったいない気がしてなりません。

 チーフと彼女たちが去ることで別の悩みが生まれないといいのですが…。
 
 

 

 

 



 





 
 

ご祝儀はずみます!

 当店の女性が結婚するそうで、報告をもらいました。

 お相手はテレビ局にお勤めのサラリーマンで、三年お付き合いしてのゴールインだそうです。

 彼女の結婚報告で何が嬉しかったかと言いますと、
「ママ、これ」
 と結婚式の招待状を渡されたことです。

「必ず出席して下さいね」
 と言われたので、
「…いいの?」
 彼女の顔をマジマジ見てしまいました。

 当店の女性たちのほとんどは昼間、正社員なり派遣なりで働いています。

 なので夜、銀座でアルバイトしていることは会社は無論、親にも彼氏にも内緒にしているので、結婚となった時f:id:ElderlyMom:20200110203428j:plain挙式に呼ばれることは決してありません。

 どころか、駅の構内や電車内で会ってもそ知らぬ顔をされます。

 彼女たちからしたら、年食った和服の女性と一緒のところを万が一にも昼間の仕事の関係者に見られたらアウトなわけで、そうした場合は無視しても構わないとあらかじめ伝えてあるからです。

 ですから知らぬ顔をされたところで動揺はしませんが、寂しさはあります。 

 共に働いているのに、店の外ですれ違ったら知らん顔…中々ないケースです。

 招待状をくれた彼女は大学四年からアルバイトを始めて、就職してからもいるので通算六年になります。

 飛びっきりの美人ではありませんが、やや天然で裏がなく、とてもチャーミングな女性です。

 お相手がバツ2だそうで引っ掛からないでもないですが、めちゃくちゃ彼女を愛しているそうですからきっと大丈夫でしょう。

「マジで来て下さいね。ここでアルバイトしてるのは彼にも言ったし、両親も参列していただきなさいと言ってるので」

 何ともオープンで、心暖まります。 
 出席させてもらうかどうかは考えさせていただくにしても、

 ご祝儀ははずみますよ!
 
 期待して下さい!

高額な飲食代

 銀座には常軌を逸しているとしか思えない、高額な飲食代を請求するお店があります。

 一流クラブとか高級クラブとか呼ばれる類の店ですが、同業者の私からしても呆れ返ることしばしばです。

 いつでしたか、『かりそめ天国』という番組で、ピン芸人が銀座の高級クラブを体験するという企画をやっていたのですが、その時の飲食代が90分で30万円を越えていました。

 番組MCの有吉さんとマツコさんは、

「銀座だからって取り過ぎじゃないの!?」
「本当だよ。バッカじゃないか?」
 顔を見合わせながら吠えていました。

 まさにその通りで、お会計の内訳は、ヘネシーのVSOPを皮切りに、『ピンドン』と呼ばれるドンペリのロゼやクリュッグなどの高級シャンパンも抜いてはいましたが、それでもやはりやり過ぎです。

 何故このような高額な店がまかり通るのか、不景気にも関わらす潰れないのか…?
 
 不思議なところですが、ひとえに需要があるからなのです。

 長年銀座にいるのでよくわかるのですが、とにもかくにも高級クラブ好きのお金持ちは多いのです。

 そうした店は、ソファーひとつを取ってもカッシーノだったり、グラスはバカラだったりします。

 そこで、黒服に「○○様」とかしずかれながら、そこらの芸能人顔負けの美女をはべらせて高級な酒をたしなむことこそ、彼らに取っては「これが銀座」なのかもしれません。

楽天』の三木谷会長兼社長が、数百万もするワインをポンポン開けて、一晩で二千万円も使われたのがいい例です。

 話は変わりますが、この飲食代を巡ってトラブルに巻き込まれたことがありました。

 ご紹介で見えた自営業のお客様ですが、二時間ほど楽しく飲まれて、
「お会計してくれ」
 とおっしゃるので、料金を書いたメモをお渡しすると、

「五万円!? 何だ、これは? ぼったくりか!」
 表情を変えて激昂されました。

「こんなふざけた料金払えるか! 警察を呼べ、警察を!」
 あっけに取られている我々の前で110番されてしまいました。

 ほどなくして二人の警察官がやって来たのですが、明細書に目を通すと、

「お客さん、この料金は何の問題もありませんよ。むしろ良心的ですよ」
 と言って下さり、怒りの静まらない中年客を連れ出してくれました。

 銀座で飲むのは初めてと言いつつ、気前の良い飲み方をされていたので、こちらもf:id:ElderlyMom:20200109164825j:plain甘えてしまったのですが、それにしても警察に介入されたのは初めてのことで大ショックでした。

 高級クラブ並みの料金でガタガタ言われるならまだしも、思い出すといまだにくやしくてなりません。

 

 

 

『ママとパトロン』

f:id:ElderlyMom:20191225195259j:plain あと2日で今年の営業もおしまいという昨日、実にいけ好かない客に来店されてしまいました。

 フリーで入って来た60がらみの中年ですが、ネチネチと粘着質で、少し前に『会員制』の看板を外したのを思いきり後悔してしまいました。
 
 この客、地方で手広く不動産業を営んでいるそうですが、入るなり、
「はあ、これはいい店だ。内装に金がかかっている」
 と、ほめてくれた迄は良かったのですが、飲み始めると、

「ママさんのパトロンは、船が好きなんですな?」
 と、突拍子もないことを言い出して絡んできました。

「えっ? 私、そういう人はいないんですけども」
 作り笑顔で対応すると、

「またまたあ。おとぼけですな。まさかママさんお一人でこんな立派な店を始めたわけじゃないでしょう?」

 口調こそ柔らかいものの、ニヤつきながらで、慇懃無礼とはこうした男のことを言うのでしょう。
 
 当店は、船室を模した造りになっているのですが、壁やソファ、絨毯に至るまでマホガニーと呼ばれるえんじ色で統一しているので、高級に映るらしいのです。

 しかしながらこの店は私がお金をかけて造ったわけではなく居抜きで探した、いわば中古物件です。
 
 しかもオーナーが早くやめたいからと格安で譲ってくれたのです。

 そんないきさつを知る由もないこの不動産屋は酒癖も悪いようでネチネチがいや増すと、

「私も一度くらいはパトロンをやってみたいもんだ」
 とか、
「君たちみたいな若い子にパパと呼ばれてみたいよ」
 などとほざきながらハウスボトルを飲んでは、女性たちにdrinkの一杯もくれないケチっぷりでした。
 
 そもそもこの客に限らず、銀座のママにパトロンがいると思い込んでいる輩は男女問わず多いようです。

 私自身うざいほど言われ続けて来ました。

 松本清張の『黒革の手帳』あたりが影響していると思われますが、パトロンがいないと女は店を持てないとでも思われているのでしょうか?

 例えばですが、銀座で10坪ほどのスナックを開きたいなら、家賃の相場は25万円くらいですからその10倍の250万円を保証金として用意出来れば、空き物件次第ですが、店舗を借りられるわけです。

 テナント料のバカ高いビルや新築物件はさておいてですが。

 下手したらマンションの頭金より安いわけで、高級クラブで稼いでいるホステスだったらお茶の子さいさい、OLだってママになれるのです。

 パトロンが介入しなければならない理由などどこにもありません。

 無論、パトロン持ちがいないとは否定しませんが、いたとしても一握りな筈です。

 ついつい力説してしまいましたが、不愉快極まりないこの不動産屋のせいです。

 

 
 

 

 

ホームレスに毛皮のコートをプレゼントしたホステスがいました。

 街はX'masモードですが、この時期になると決まって思い出すホステスがいます。

 かなり昔に、半年だけ一緒に働いた同輩ですが、この彼女のやらかしたことが強烈過ぎて何年経っても脳から消え去ってくれないのですf:id:ElderlyMom:20191224192944j:plain

 ホステス時代のあるX'masイブの夜、クラブの仕事が終わって帰ろうとすると、
「何か予定ある? なかったら割り勘で飲みに行かない?」
 と彼女に誘われました。

 さして親しくもなかったので驚きましたが、彼氏もいなければ別段用事もなかったのでOKして二人で六本木に繰り出しました。

 そこで、昔でいうディスコを皮切りにダーツbar、カラオケと夜が明けるまで遊びまくりました。

 彼女は実は私と友達になりたかったと打ち明けて、私を喜ばせてくれました。

 人目を引くスレンダーな美人で、客にも絶大な人気があった彼女でしたが、一匹狼的なところがあって、店の誰とも交わっていなかったのです。
 
 散々遊んで、
「さあ、帰ろうか」
 と、明け方の街をタクシーを探しながら歩いていた時です。
 
 彼女の脚がシャッターを下ろした店の前で止まったので振り向くとそこには、段ボールでねぐらを作ったホームレスが海老のように丸まって寝ていました。

「どうしたの? 帰ろうよ」
 腕をからめて促したのですが彼女は動こうとせず、じっとそのホームレスを見下ろしていました。

 次の瞬間、何をとち狂ったのか、羽織っていた毛皮のロングコートを肩から滑らせると、

「おじさん、風邪引かないでよ」

 ホームレスの体にふわりとかけました。

「ちょ、ちょっと何やってんの!」

 慌てて毛皮のコートをホームレスから剥がそうとすると、

「余計なことしないで! クリスマスプレゼントなんだから」

 存外に強い力と声で止められて、近寄って来たタクシーに押し込まれてしまいました。

 家に帰ったものの目が冴えて眠れませんでした。
 
 彼女が羽織っていたのは、毛並みが宝石のようにきらきら輝く、ホワイトミンクの最高級品です。

 どうして、ホームレスにあげたんだろう?

 酔っていたから?

 いやいや、私を止めたあの時の目は酔っていなかった…。

 それならおとうさんがホームレスをしていたとか?

 想像を巡らすもわかる筈がありません。

 夕方早めに出勤して彼女を待ちましたが、彼女は出て来ませんでした。

 店長に聞いたら、
「昨日でやめたんだよ」
 と教えられました。

 その後彼女とは銀座で会うこともなく消息知れずです。

 毛皮事件(?)も謎のままです。


 

 

 

 

 

『水商売』という仕事

 地方に嫁いでいる従姉妹から電話があって、
「うちの旦那が来週お得意さん連れて東京行くんだけど、銀座で飲みたいそうだからあんたの店で飲ませて上げてくれない?」
 と頼まれたので、

「この時期は無理。忘年会で埋まってるから」
 と嘘をついて断りました。

 春頃に、
「息子が会社の上司にあんたの店の話したら、案内しろってうるさいらしいのよ」
 と言って来た時も最もらしい理由をつけて断りました。

 店に入れたくないからです。

 長い年月私はこの従姉妹に煮え湯を飲まされて来ました。

 水商売を毛嫌いしている彼女は、私をも嫌悪し、親戚が集まる席で私が男衆にビールでも注ごうものなら、
「さすがに注ぎ方がうまいわね」
 と、皮肉ったり、
「あんたが一番稼いでるんだからここは持ちなさいよ」
 と支払いを押し付けたりしました。

 リーマンショックの影響でまともに客が入らず、抱えている借金もいっこうに減らずに頭を抱えている時期でした。

 彼女に見下されるまでもなく水商売は偏見の塊です。

 誰よりも私が知っています。

 飲みにいらっしゃるお客様でさえ、
「こんなところで働いているのを親が見たら悲しむよ」
 とアルバイトの学生に説教しますし、

「俺だったら、自分の彼女を絶対こんなところで働かせない!」
 と言い切るサラリーマンf:id:ElderlyMom:20191213173946j:plainもいます。

 おかげで自分の仕事にプライドを持てずに来ました。

 彼女いわく、私は家系の恥さらしだそうです。

 それならこんな恥さらしに都合のいい時だけ連絡して来ないで、という話です。

 旦那や息子に罪はないけど、この先何度頼まれても店に入れるつもりはありませんから。