elderlyママのぼやき

元銀座のママです。長年続けてきたナイトクラブを令和2年3月27日に閉店しました。以降、農作業と母親の介護に励みながら銀座の思い出と日常をつづっています。

捨てられない着物。

 今日は着物の虫干しをしようと思っていたのですが、あいにくの雨で出来なくなりました。

 店では毎日着物なのでいつの間にか増えてしまい、虫干しもひと苦労です。

 知り合いのママが店を畳む時に、

「残ったのは着物だけだわ」
 
 と嘆いていたのがうなずけます。

 最近は虫干しをする度に、着なくなったものを処分するようにしているのですが、もう着ることもないと思いながら捨てられないでいる着物があります。

 見るからに安っぽい花柄の小紋で、袖を通したのは一度だけです。f:id:ElderlyMom:20200915154221j:plain

 ホステス時代、初めて勤めたクラブで『和服の日』なるものがあって、着て行かないとその日の報酬がゼロになるというので、慌てて上野のアメ横に買いに行きました。

 仕立て上がりの中古品で、一万円もしなかったと思います。
 
 美容室で着付けてもらうと高いので、自己流で何とか着て出勤したのですが、客席でオーナーママにケチョンケチョンにやっつけられてしまいました。

「こういう店では小紋はダメなの。どんなに高くても普段着扱いの着物だからね」

「それに小紋袋帯は変でしょう? 絞りの帯揚げもチグハグだし」

 お客様が気の毒がって、

「似合ってるんだからいいじゃないか」
 
 助け船を出してくれるも、

「そもそも9月に袷なんて、聞いたことがないわ。ルール違反もいいとこよ」
 
 オーナーママの攻撃は止みませんでした。

 更衣室で泣いていると店長が入って来て、

「おまえ、オーナーに嫌われてるんだよ」
 
 と言われました。
 
 それは知っていました。
 
 27才で、生活のために足を踏み入れた夜の銀座でしたが、最初からイヤでイヤでたまりませんでした。

 売り上げを伸ばすために飲めないウイスキーを飲まされたり、えげつない会話に作り笑顔で乗じたり…。

 ひざに手を置かれたり、背中に腕を回された時はぞわっとして身の毛がよだちました。

「OLの半分の時間で、倍以上の給料貰ってんだから少しは我慢しろよ。水商売のいいとこ取りしてんじゃないよ」
 
 店長にはしょっちゅう叱られていました。

 そうした私の、水商売に向けた不遜な態度が『女帝』とあがめられていたオーナーママに届かない筈がありません。

 あの時私は彼女に仕返しをされたのだと思っています。
 
 確かに私は傲慢で生意気でした。

 よくぞ首にならなかったものです。

 この着物は今なおタンスの底に眠っています。

 詰まっているものが多すぎて捨てられません。