elderlyママのぼやき

元銀座のママです。長年続けてきたナイトクラブを令和2年3月27日に閉店しました。以降、農作業と母親の介護に励みながら銀座の思い出と日常をつづっています。

ホームレスに毛皮のコートをプレゼント。

 街はX'masモード一色ですが、この時期になると決まって思い出すホステスがいます。

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 名前を佐江子と言って、店を始める前に同じクラブで働いていた女性です。

 その佐江子が、あるX'masイブの夜に声をかけて来ました。

「今日予定ある? なかったら割り勘で飲みに行かない?」

 それほど親しくしていたわけではありませんが、彼氏もいなければ別段用事もなかったのでOKして二人で六本木に繰り出しました。

 そこで、昔でいうところのディスコを皮切りにダーツbar、カラオケと夜が明けるまで遊びまくりました。
  
 散々遊んで、

「さあ、帰ろうか」
 
 と、明け方の街をタクシーを探して歩いていた時です。
 
 彼女の、ピンヒールを履いた長い脚がシャッターを下ろした店の前でピタリと止まりました。

 見るとそこには、段ボールにくるまうようにしてホームレスが寝ていました。


「どうしたの? 帰ろうよ」
 
 促すも佐江子はその場から動こうとしません。

 じっとそのホームレスを見下ろしていました。

 と、次の瞬間、羽織っていた毛皮のロングコートを肩から滑らせると、

「おじさん、風邪引かないでよ」

 ホームレスの体にふわりとかけました。

「ちょ、ちょっと何やってんのよ!」

 慌てて駆け寄り、毛皮のコートをホームレスからはがそうとしましたが、

「余計なことしないで! クリスマスプレゼントなんだから」

 存外に強い力と声で止められました。

 その日は家に帰っても眠れませんでした。
 
 彼女が羽織っていたのは、毛並みが宝石のようにきらきら輝く、ホワイトミンクの高級品です。

 きれいだし、お客様の人気もあったからそこそこ稼いでいたとは思いますが、それでも簡単に買えるしろものではありません。

 どうして、ホームレスにあげたんだろう?

 酔っていたからだろうか?

 いやいや、私の手をふりほどいたあの時の目は酔っていなかった…。

 それなら何故?

 おとうさんがホームレスをしていたとか?

 想像を巡らすもわかりません。

 翌日彼女は出勤して来ませんでした。

 店長に聞いたら、

「昨日でやめたんだよ」
 
 と教えられました。

 その後彼女と会うことはありませんが、クリスマスシーズンが訪れるたびこうして思い出しています。