elderlyママのぼやき

元銀座のママです。長年続けてきたナイトクラブを令和2年4月3日に閉店しました。以降、地方に暮らしながら農作業と母親の介護に励んでいます。

ホームレスに毛皮のコートをプレゼント。

 街はX'masモード一色ですが、この時期になると決まって思い出すホステスがいます。

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 名前を佐江子と言って、ホステス時代に同じ店で働いていた女性です。

 その佐江子が、あるX'masイブの夜に声をかけて来ました。

「今日予定ある? なかったら割り勘で飲みに行かない?」

 それほど親しくしていたわけではなかったので驚きましたが、彼氏もいなければ別段用事もなかったのでOKして二人で六本木に繰り出しました。

 そこで、ディスコを皮切りにダーツbar、カラオケと夜が明けるまで遊びまくりました。
  
 遊び疲れて、

「さあ、帰ろうか」
 
 と、明け方の街をタクシーを探しながら歩いていた時です。
 
 彼女の、ピンヒールを履いた長い脚がシャッターを下ろした店の前でピタリと止まりました。

 見るとそこには、段ボールにくるまってホームレスが寝ていました。


「どうしたの? 帰ろうよ」
 
 促すも佐江子はその場から動こうとしません。

 じっとそのホームレスを見下ろしていました。

 と、次の瞬間、羽織っていた毛皮のロングコートを肩から滑らせると、

「おじさん、風邪引かないでよ」

 ホームレスの体にふわりとかけました。

「ちょ、ちょっと何やってんのよ!」

 慌てて駆け寄り、毛皮のコートをホームレスからはがそうとしましたが、

「余計なことしないで! クリスマスプレゼントなんだから」

 強い力と声で止められました。

 その日は家に帰っても眠れませんでした。
 
 彼女が羽織っていたのは、毛並みが宝石のようにきらきら輝く、ホワイトミンクの最高級品です。

 人気もあって稼いでいたとはいえ、それでもそう簡単に買えるしろものではありません。

 どうして、ホームレスにあげたんだろう?

 酔っていたからだろうか?

 いやいや、私の手をふりほどいたあの時の目は酔っていなかった…。

 それなら何故?

 おとうさんがホームレスをしていたとか?

 想像を巡らすもさっぱりわかりません。

 翌日彼女は出勤して来ませんでした。

 店長に聞いたら、

「昨日でやめたんだよ」
 
 と教えられました。

 その後彼女と会うことはありませんが、クリスマスシーズンが訪れるたびこうして思い出しています。