elderlyママのぼやき

元銀座のママです。長年続けてきたナイトクラブを令和2年3月27日に閉店しました。以降、農作業と母親の介護に励みながら銀座の思い出と日常をつづっています。

『ママとパトロン』

 あと2日で今年の営業もおしまいという昨日、実にいけ好かない客に来店されてしまいました。

 フリーで入って来た60がらみの客ですが、ネチネチと粘着質で、少し前に『会員制』の看板を外したのを思いきり後悔してしまいました。
 
 この客、地方で手広く不動産業を営んでいるそうですが、入るなり、

「はあ、これはいい店だ。内装に金がかかっている」
 
 と、ほめてくれた迄は良かったのですが、飲み進むと、

「ママさんのパトロンは、船が好きなんですな?」
 
 と、突拍子もないことを言い出しました。

「えっ? 私、そういう人はいないんですけど」 

 作り笑顔で対応するも、

「またまたあ。おとぼけですな。まさかママさんお一人でこんな立派な店を始めたわけじゃないでしょう?」

 とからんで来ます。

 口調こそ柔らかいものの、ニヤつきながらで、慇懃無礼とはこうしたことを言うのでしょう。
 
 当店は、船室を模した造りになっているのですが、壁やソファ、絨毯に至るまでをマホガニー色で統一しているので高級に映るらしいのです。

 しかしながらこの店は私がお金をかけて造ったわけではなく居抜きで探した、いわば中古物件です。
 
 しかもオーナーが早く売りたいからと格安で譲ってくれました。

 そんないきさつも知らないでこの不動産屋は、

「私も一度くらいはパトロンをやってみたいもんだ」
 
「君たちみたいな若い子にパパと呼ばれてみたいよ」

 とほざきをやめません。
 
 そもそもこの客に限らず、銀座のママにパトロンがいると思い込んでいる輩は男女問わず多いようです。

 私自身うざいほど言われ続けて来ました。

 松本清張の『黒革の手帳』あたりが影響していると思われますが、パトロンがいないと女は店を持てないとでも思っているのでしょうか?

 例えばですが、銀座で10坪ほどのスナックを開きたいなら、家賃の相場は25万円くらいですからその10倍の250万円を保証金として用意出来れば、空き物件次第ですが、店舗は借りられるわけです。

 もちろんテナント料のバカ高いビルや新築物件はさておいてですが。

 下手したらマンションの頭金より安いわけで、高級クラブで稼いでいるナンバーワンクラスのホステスだったらお茶の子さいさい、OLだってママになれるのです。

 パトロンが介入しなければならない理由などどこにもありません。

 無論、パトロン持ちがいないとは否定しませんが、いたとしても一握りな筈です。

 ついつい熱くなってしまいましたが、不愉快極まりないこの不動産屋のせいです。