elderlyママのぼやき

銀座の高齢なママです。夜な夜な話を書いています。

客引きの清乃さん。

 暇なので店の表に立っていると、

「今日もダメだわねぇ。歩いてるのは中国人ばかりで…」 

 ちりめん柄のド派手な着物を着た、清乃さんがぶつくさ言いながら寄って来ました。

 彼女はキャッチと呼ばれる客引きです。

 女性の客引きは珍しがられますが私の知る限り4人はいます。

 皆、一様にホステス上がりだそうです。

 顔だけは見知っていた清乃さんと親しくなったのは去年の夏からです。

 ある日、いつものように店の前に立っていると二人の中年客を連れた清乃さんが近づいて来て、

「こちらの旦那方、落ち着いた店で飲みたいそうなんだけど、ママさんの店でお願い出来ない?」
 と、頼まれました。
 
 暇だったし、そうしたかったのは山々だったのですが、店を経営している我々は、

「従業員には絶対客引きをさせないように。客引きは違法であるから見かけたら通報するように」
 
 と築地警察よりきびしく指導されているので断らざるを得ませんでした。

 断ったことで気を悪くされたかと思いきや、その日をきっかけに清乃さんは私を友達認定したようで、外に立っていると側に来てf:id:ElderlyMom:20200123163933j:plain油を売って行くようになりました。

「8丁目のキャバクラは25%も歩合くれるのに、同じビルのガールズバーなんてたったの15%よ。バカらしくてやってられないわ」
 
「『樹里』のママと店長、やっぱり出来てるらしいわ」
 
 ほとんどが愚痴やどうでもいい情報ばかりなので、時にうざかったりもするのですが、憎めない、気のいいところもあって邪険にできません。

 それにしても客引きの仕事は大変そうです。

 お客さんを見つけてあちこちの店に案内できる日はいいのですが、get出来ない日は寒かろうが雨だろうが、路上に立ち続けています。 

「ホステスやってるよりよほどいいわ。実入りだっていいし、気楽だからね」
 と言いますが、それにしてもネオンの灯る7時頃から客の引ける深夜までです。 

 70才はとうに越えている筈ですが、たいした体力です。 

 近頃清乃さんはどんどん私に近づいて来て、

「手洗い貸りてもいい?」
 だの、
「店にポーチ置かせてくれない?」
 だのと口にするようになりました。

 この前に至っては、

「もし私が私服のオトリに連行されたら、身元引き受け人になってよね」
 と頼まれました。

 いいのですが、
 そんなこと、二つ返事でOKして上げたいのですが、ただ、

 警察主催の『客引き撲滅キャンペーン』に参加している私が客引きの清乃さんとこうも親しくなっていいものでしょうか。

 と思うのです。