elderlyママのぼやき

元銀座のママです。長年続けてきたナイトクラブを令和2年3月27日に閉店しました。以降、農作業と母親の介護に励みながら銀座の思い出と日常をつづっています。

ママたちの副業

 律子ママは妹分ですが、なかなかのやり手で当店の倍ほどの高級クラブを経営しています。

 去年の2月、副業で寿司やを始めたのですが、一年を待たずしてもう閉めるそうです。

「ママには悪いことしたわね、お客さん連れて来てもらったのに…」

 殊勝に謝られました。

 その寿司やが開店してほどなく、投資家のお客様を伴って顔を出しました。

 店は新築で白木の香がぷんと鼻をつき、何ともいい感じでした。

 こじんまりとして、隠れ家的な雰囲気もあり、利用したいと思わせました。

 ダメだったのは、カウンターの中に入っていた板前さんです。

 一人で仕切っていて、愛想も悪くなかったのですが、肝心の腕前がなかったのです。

 カウンターに座って投資家がまず、

「貝を切ってくれ」

 と頼むと、あろうことか、

 赤貝、トリ貝、青柳、ほっき貝、みる貝と、貝だけが寿司下駄に余すところなく並べられました。

 私はヒカリものを頼んだのですが、こちらも、

 アジ、こはだ、サバ、イワシサヨリと、まるでヒカリモノもののオンパレードでした。

 呆れていると、追い討ちをかけるように、

「房州産の片想い(アワビ)もありますが…」
 
 だの、

「アジはアオイソ(しその葉)を挟んだ方が良かったですか」

 だのとへらへら寿司用語を連発して来ます。
 
 こんな板前、律子ママはどこから見つけて来たの?

 ほとんど箸をつけないまま店を出ました。

 料金が高かったせいもあって投資家は表に出てからもずうっと憤慨していました。

路面店ならともかく、ビルの六階であのやり方はないだろ! 潰れるのは時間の問題だ!」
 
 まったく同感でした。

 よく一年近くも持ったものです。
 
 律子ママも客にあれこれ言われて閉める決意をしたようです。

 かなりの赤字も抱えてしまったようでした。

「でも、どうして寿司やだったの? クラブをもう一店舗持ちたいとか言ってなかった?」

 訊くと、

「若い子を使うのがイヤになったのよ。売り上げも上げられないくせに文句ばっか言ってさ…だから、寿司やを軌道に乗せて女将をやろうと思ったの。そのほうが世間体もいいしね」

 彼女と同じように、ホステスを使うのがイヤになって副業に走るママも確かに少なくありません。

 ですが、この律子ママに限って言えば若い子うんぬん言う資格はないように思います。

 ホステス時代、かなりのワルだったのですから。

「頑張っても頑張らなくても時給は変わらないし…」
 
 は、口癖だったし、同伴は8時半までに入店と決められているのに、

「客連れて来て儲けさせてんだから何時に入ろうが勝手じゃないのよ!」
 
 などと悪態をついて、10時過ぎに堂々と出勤していました。

 ブーメランと言ったでしょうか?

 やったことは返って来るんですよね?

 彼女を見ているとホント、よくわかります。