elderlyママのぼやき

銀座の高齢なママです。夜な夜な話を書いています。

おもいで酒

 日本酒が大好きです。

 何かとこじつけて毎日飲んでいます。

 今のところ、肝臓も中性脂肪も正常値なので、水商売は天職と調子をこいているわけです。

 日本酒を飲むようになったのは20代の後半からで、当時同じ店で働いていたとき子ちゃんという女性の影響です。

 深く印象に残っている女性なのでちょっと彼女のことを書きたいと思います。

 彼女は宮城県の出身で、店でも外でもいつも日本酒を飲んでいました。

 女優のいしだあゆみさんに似て雰囲気のある美人でしたが、酒癖が悪く、酔うと店の中でも身の上話を始めたり、泣いたりもするのでお客様にも同僚にも煙たがられていました。

 いつだったかの12月、店長に、
「とき子がベロ酔いしてるから送ってやってくれ」
 と、頼まれました。

 同方向だったからですが、正直、その頃は親しくもなかったし、いつも酔っている彼女がイヤでした。

 それでも断るわけにはいかず、20分ほど同乗してタクシーから降ろすと、申し合わせたように空からハラハラと雪が落ちて来ました。

 初雪だったと思います。

 とき子ちゃんは、

「うわあ、雪だ!」
 
 子供のように声をあげて喜び、空に両手を広げてはしゃぎ回りました。

 周囲の街灯が白いコート姿の彼女を明るく照らして、絵のように美しかったのを覚えています。

 運転手さんも見とれていたようで、メーターを倒したまま発進を忘れていました。

 その日をきっかけに飲みに行くようになったのですが、酔うと話は親兄弟、親戚筋の愚痴ばかりに終始しました。

 時々話が変わるのでどこまでが本当だったのかわかりません。

 ある日連絡もなしに来なくなってそれきりになりました。

 最近は、コロナウイルスの影響で仲間のママたちもストレスがひどいようで、

「飲もうよ!」
「発散しようよ!」
 毎日のようにお声がかかります。

 誘いに乗れば、電車で帰れるところタクシー代が発生しますし、飲み代だって只ではありません。
 
 女性の出勤を減らしたり、早じまいを強いている昨今、そんなことはできません。

 帰って、日本酒をちびちびやりながら好きな韓流ドラマでも見るのが賢明です。

 先々どうなるのか、店は続けるべきか否か、コロナウイルスによる不安さえ脳裏から取っ払うことが出来れば至福かつ黄金の時間です。

 ほろ酔いになったら、

 まぶたの裏に焼き付いてしまったあの雪の日のとき子ちゃんを思い出して、
 秋田に帰った看護師の志保ちゃんを思い出して、
 別れた彼氏もついでに思い出して…。

 この歳になると新しい思い出が生まれることはなく、

 昔ばかりをなつかしむおもいで酒です。