elderlyママのぼやき

元銀座のママです。長年続けてきたナイトクラブを令和2年3月27日に閉店しました。以降、農作業に励みながら銀座の思い出と日常をつづっています。

奇跡の再会

 先週の金曜日、店の片付けをするためにまた銀座に行きました。

 陽の明るい昼過ぎでしたが、店舗の入っているビルに近づくと、入り口に小柄な男性が立っているのが見えました。

 逆光でしたが、どうもこっちを見て笑っているようです。
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 誰だろうと思いながら近づくと、
 
 「!」

 10年前、この七丁目界隈でホームレスをしていたおじさんでした。

 写真の男性です。

 心臓が射ぬかれるほど驚きました!

 何故なら、銀座を去るに当たって最後にどうしても会いたいと切に願っていたからです。

 このおじさんとのいきさつは以前『苦い悔恨』と題した記事に書かせていただきました。

「おじさん…なの?」

 信じられず、思わず両腕をつかんで揺さぶってしまいました。

 おじさんは笑いながらうなずいてくれました。

「私のこと、覚えてる?」

 これにも、うんうんとうなずいてくれました。

 それにしてもおじさんのこの変わりようはどうでしょう?
 
 当時の、痩せ細って目だけがギョロリと鋭く、山奥に住む仙人を思わせた風貌はふっくらと柔和に変わっています。
 
 着るものも暖かそうなダウンに変わっています。

「おじさん、元気だったの?」
「今、どうしてるの?」
「急にいなくなったから心配してたのよ」

 矢継ぎ早やの私の問いにマスクをしたまま答えてくれようとはするのですが、ほとんど抜け落ちていた歯はそのままのようでモゴモゴとうまく聞き取れません。

生活保護』と『アパート』の言葉は聞き取れました。

「あの時はごめんなさいね」
 
 10年前、突然冷たい態度を取ってしまったことを謝りました。

 このひと言が言いたくてどうしてもおじさんに会いたかったのです。

「時々、銀座に来てたの?」
 
 この問いには首を横に振りました。

「店、もうやめたのよ。コロナウイルスが怖いから」

 袖看板に連なっている店名を指差して教えました。

コロナウイルスに気をつけてね。感染しないようにね。またいつか元気で会いましょうね」

 気持ちばかりのおこづかいをダウンのポケットにすべらせるとおじさんはペコリと頭を下げて去って行きました。 
 
 10年ぶりの再会が叶いました。

 後ろ姿を見送りながらふとおじさんはどうして今日のこの時間、この場所にいたのだろう?

 不思議に思いました。

 まるで私が来るのを知っていたように…。