elderlyママのぼやき

銀座の高齢なママです。夜な夜な話を書いています。

5本のボトル

 スティホームのさなかですが、銀座に来ています。

 このところ、休業中の店を狙った空き巣が多発しているようで、ニュースを見るたび心臓をバクつかせていました。

 店に、盗られて欲しくないものを残して来てしまったからです。

 写真の、5本のボトルです。

 酒ごとき?
 
 と、失笑を買いそうですが、私にとってはかけがえのない大事なものです。

 鬼籍に入られたお客様方のボトルですが、二週間前におおむねの片付けを済ませた後、

「引き渡しまでお店をお守り下さい」
 
 手を合わせてあえて置いて来ました。

 それを今日取りに来ました。 

 今は朝の11時です。

 街中に人がいないのは前回同様ですが、あちらこちらのショーウインドウから商品が消えているのに驚ろかされています。

 高級靴で有名な『ルブタン』や『ヴィトン』、『ドルチェ&ガッバーナ』など、軒並みです。

 空き巣対策でしょう。

 当ビルは、照明を落としているせいで薄暗く、誰が潜んでいてもおかしくない様相です。
 
 怖いです。

 鍵を開けて店内に入ると5本のボトルは無事でした。

 当店は高級クラブではないので、元々高級酒も値の張る絵画なども飾っていませんが、もしも空き巣が侵入した際に盗る物がないのに腹を立ててこれらのボトルを割ってしまわないか心配だったのです。

 用意して来たバスタオルでそれぞれをくるむと、頑丈な手提げ袋に入れて店を出ました。

 かなりな重さですがホッとしました。

 今、93歳になる母と地方で暮らしています。

 この母が、赤ちゃん返りと言いますか、甘え癖がついてしまって、私の姿が見えないと大騒ぎします。

 今回東京に来るのも言い聞かせが大変でした。

 乗り継ぎが良くないので片道4時間近くかかりますが夕方には戻れそうです。

 帰ったら母にこれらのボトルにまつわる話をしてあげようと思います。

 このボトルを飲まれていたお客様はね…

「34年前に開店した時、一番乗りで来て下さったのf:id:ElderlyMom:20200430094738j:plain

 この方はね…

「がんの闘病中に、病院を抜け出して飲みに来たのよ。完治してシニアのマラソン選手になったの」

 この方は…

「84歳まで来店された博士で、ノーベル賞候補になったこともあるのよ」

 この方は…

 この方は…

「皆さんにすっごくすっごくお世話になったの。この方たちがいなかったらお店は続けて来れなかったのよ」

 そう教えたら、ありがたがって母もこの5本のボトルに手を合わせてくれる筈です。